【新定義】高校教員のための“活用問題”つくりかたマニュアル 〜実際の活用問題例と共に解説〜

ゆとりんり

活用問題ってなに?
どんなのが活用問題なの?

そんな先生いませんか?学校で「活用問題」が定期テストに導入されたけど、いまいちイメージが掴めない。

本記事を読めば、活用問題とは何かわかると同時に、どのような問題を作ればいいのか、ビジョンが見えてくるでしょう。

筆者の紹介

本記事を書いた人

ゆとりんり:
新卒で倍率100倍の民間企業に就職後、教員に転職
教員採用試験の採用枠1枠に1発合格(働きながらの完全独学)
県に授業の研修用資料の提供や、学校の試験問題見本の作成を行う。
現在は教員から転職して、並にゆとりに働いています。
noteで「少し変わった倫理の指導案」をスライドと一緒に公開しています!

採用1年目から活用問題を学校から強いられる先生も多いでしょう。こんなこと思ったことありませんか?

悩む1年目先生

いや、活用問題ってなんだよ…。

この記事を読んで、あなたの学校で最も問題作成が上手い先生になってしまいましょう。私が作った活用問題例も合わせて参考にしていただけるとありがたいです。

活用問題とは

そもそも活用問題とはなにか。教育センターでは次のように示されています。

活用問題とは(岩手県立総合教育センター)

活用問題とは,習得した知識・技能の活用を通して思考力,判断力,表現力等を育むことを目的として作成した問題です。

正直、むずかしい。なので、本記事でわかりやすくしちゃいます。

ただの愚痴ですが、なぜか教育関係者は物事を難しく表現することになぜかこだわるのです。
簡単に、簡単に、活用問題のマニュアル、作成しました。

新定義!活用問題とは

活用問題とは何か、ここで新定義します。

新定義

活用問題とは、学んだ知識を、日常・自分自身へ活用出来るか、確認する問題です。

つまり、活用問題の「活用」とは、学んだ知識の、日常への活用のことです。

そのため、理科でよくある「図表の読み取り」や、国語でよくある「教科書以外の本」で「下線部が示すものを抜き出せ」は活用問題ではありません。

本記事を読んでいる公民科の先生だけでも、本当の活用を作ってやりましょう。

問題の難易度別活用問題の作り方

では早速、活用問題の作り方を紹介していきます。ここではレベル別に紹介していきます。レベルが上がるにつれ、生徒からすると知識の活用レベルが上がり、解きにくい問題となります。

では、具体例とともに、問題のイメージを作っていきましょう。

レベル1-学んだ知識を、日常においてどのように生かすか考える問題

「学んだ知識を、日常においてどのように生かすか考える問題」とはどのようなものなのか、少し具体的に説明します。

つまり、レベル1の問題とは次のようなことになります。

レベル1の活用問題

日常のある場面において、またはある人の発言に対して、習った知識の理論で考えるとどうなるのか考えさせる問い

まだ想像もつかないかもしれないので、私の考えた具体例を紹介します。

具体例(倫理の活用問題)

女優の芦田愛菜さんが映画の挨拶で「『その人のことを信じようと思います』っていう言葉ってけっこう使うと思うんですけど、『それがどういう意味なんだろう』って考えたときに、その人自身を信じているのではなくて・・・」とスピーチをしています。人を信じるとはどういうことなのか、あなたの考えをテスト範囲に登場する思想家の思想を用いて説明しなさい。なお、どの思想家を選ぶのかは自由とする。

この問題は、ある日のネット記事を見て作成しました。芦田愛菜さんの考え方があり、それに対して自分はどういう意見を持つのか。そこを問う問題になります。

普段生活する中で、ニュースや会話は溢れていますが、じゃあ自分はそれに対してどう考えるのか。習った知識を応用して自分の考えをまとめてみよう。と活用を促すものです。

このように、単に習った知識を用いて考える日常の問題をレベル1とします。私の例題だと、問題ってほどの問題でもないですね(笑)

倫理の活用問題は大抵はこのタイプになると思います。

レベル2-日常において起こったイレギュラー(非日常)が、なぜ起こったのか、学んだ知識を活用して説明する問題

先程は日常への活用でしたが、こちらは非日常に着目します。なぜその非日常が起こったのか、考えさせましょう。

レベル2の活用問題

ニュースを見てみると、非日常が転がっています。この非日常はなぜ起こったのか、習った知識を活用して、謎を解明させ、説明させ問題

ポイントは、先生側がテスト範囲にあった非日常を見つけられるかというところにあります。

実はこれレベルがすごく高いことをしています。この型の問題を解くのに、生徒に必要な能力は次の通りです。

  1. 資料から有用な情報が読める
  2. なぜにつなげることができる
  3. 習った知識を組み込める
  4. 考えを説明できる

これらを全て完璧にできるには、相当な能力が必要です。年間を通して、この力の成長を測れるのも、活用問題のいいところです。

このレベル2の活用問題の具体例を紹介します。

具体例(現代社会の活用問題)

授業の中で、国と国を比べる指標としてお金に注目し、GDPの学習をした。しかし、今専門家の間で「GDPという尺度はもう使えないのではないか?」という議論が出てきているといわれる。それは若者を中心にある文化が定着しつつあることが要因で、値段以上に幸福度を感じているからである。
下の図は,そのことを具体的に示したものである。次の供給曲線が示す具体的な商品を下の語群から選び、その商品を選んだ理由と、この図がなぜ「値段以上に幸せを感じている」ことにつながるのか、図から読み取れることをわかりやすく150字程度で説明しなさい。

① 古着
② サブスクリプション(アマゾンプライム・ネットフリックス等)
③ マスク
④ ライブのチケット

 本来ならば綺麗な需要供給曲線を習い、試験にも出しますが、現代の状況(教科書的にはイレギュラー)に合わせて需要供給曲線を作ります生徒にはそれを読み取らせるという問題となります。

これにはまず、先生自身がニュースを見て、それを問題に落とし込む能力が必要になりますということはもちろん、先生自身にも活用の能力が必要になるのです。

レベル3-そのイレギュラー(=非日常)の問題点や影響と解決策を考える。

先のレベル2と同じように、イレギュラーを先生側が提示するのもあり、もっとレベルをあげようと思うと、生徒にイレギュラーに気づかせるのです。

レベル3の活用問題

レベル2では、イレギュラー(異常性)をこちらが提示しましたが、レベル3では生徒自身にイレギュラーから気づかせ、解決策すら自分で考えさせる問題

具体例(倫理の活用問題)

授業の中で「人は言葉を操っているのか,言葉に操られているのか」を考えた。これについて気になった出題者は様々な文献を調べるなかで,次のような研究を見つけた。次の研究は大阪教育大学付属天王寺中学校の1年生が行った自由研究である。次の研究概要を読んだうえで,高校3年生という先輩として,この中学1年生の研究の中から課題を1つ挙げ「もう1点,こんな実験もした方がいいよ」というアドバイスをしなさい。その際に,ソシュール又はウィトゲンシュタインの思想を用いたアドバイスとすることとする。

(自由研究の資料は長い上に中学生の著作権もあるので省略します)

問題の題材にした自由研究のリンクを貼っておくので見てみてください。本当にすごいです。中学1年生のレベルとは思えません。(「言葉の力」は本当なのか? -古代日本で信仰されていた言霊を検証する-

この問題は、研究の中から「これおかしくない?」というイレギュラーを生徒自身に発見させ、それに対する解決策を、習った知識を活用して考えさせる。そんな問題となっています。

まとめ

活用問題とはどういうものか、少しでもイメージできましたでしょうか。公民科は比較的活用問題が作りやすい科目となっています。

あなたが、学校内で率先して本当の意味での活用問題を作成することで、問題作成の先駆者になれるでしょう。

「あの人はできる先生」と言われる日も近いです。

私の場合、学校の研修で私の活用問題が使われていました。県の研修にも問題を提供したこともあります。本記事で活用問題とは何か具体的に理解し、学校でもトップレベルの問題を作成してみましょう。

もちろん、公民科以外の科目でも十分参考にできると思います。特に、活用問題の活用とは、知識の日常への活用である」という認識は、どの科目にも必要となります。

追伸

活用問題を理解することは普段の授業へも良い影響を与えます。具体的にいうと、つい先程あげた「活用問題とは何かの認識」をもつことで授業をおもしろくするのです。

生徒は日々このような想いで勉強しています。

不満を持つ高校生

結局勉強しても役に立たないじゃん!

私も高校生の時は思っていました。読んでいるみなさんも思っていたのではないでしょうか。

そして教えながらも、「これって勉強して将来何の役に立つんですか?」の質問に怯えているのではないでしょうか。

そんな時、授業終わりにでも1つ活用問題のような考える問題をみんなで考えてみる時間をとったらどうでしょう。

「あ、この知識って、普段のここで役立つのか」という意識が生まれるのです。

実際にわたしは授業で活用問題を実施している

私は倫理の時間で定期的にお悩み解決回をもうけています。生徒から悩みを募集し、みんなで1人ずつ違う思想家を選び、その思想家の立場で悩みを解決する方法を考えプレゼンします。

これこそ「知識の、日常への活用」なのです。若手の先生方、ぜひ今日から、活用問題を活用してみてください。

活用問題を意識した授業を下においておきます。参考にしてください。

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倫理の授業がつくれない…

よく言われます。地歴公民の教員でも一番担当したくないのが、「倫理」です。
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