このような方々のモヤモヤを一気に晴らしていきます。
まず、戦略的学習力とは何か、についてわからないという方はこちらの記事を読んでみてください!
戦略的学習力とは、2030年に必要なスキル1位で、
何か新しいものを学ぶ時に、最適な学習方法を選択し、効率よく学んだり、教えたりする力のことです。
現代にマストとなる独学力と言えるでしょう。
では、この戦略的学習力を培う授業とはどのようなものか解説していきます。
筆者の紹介
わたしも独学で教員採用試験を受験し、合格しています。独学には戦略が必ず関わってきます。ただ闇雲に勉強するというのは非効率的なので、戦略的になることは合理的です。
同時に、生徒たちもTOEICやその他資格など、現代を生きるには必要な力です。ですが、そんな力をつけてあげる授業については情報が少ないのです。
ゆとりんり:
新卒で倍率100倍の民間企業に就職後、教員に転職
教員採用試験の採用枠1枠に1発合格(働きながらの完全独学)
県に授業の研修用資料の提供や、学校の試験問題見本の作成を行う。
現在は教員から転職して、並にゆとりに働いています。
noteで「少し変わった倫理の指導案」をスライドと一緒に公開しています!
本記事では、具体的な授業に落とし込んで、戦略的学習力をつける授業を紹介します。
本記事の内容(押すとジャンプします)
戦略的学習力をつける授業とは
早速ですが結論です。
戦略的学習力をつける授業とは「何を、どのように、効率よく学び、活用するのか考え、実践する」授業です。
もっとわかりやすくいうと、「効率よく学ぶ力」をつける授業です。
戦略的学習力をつける授業の流れ
戦略的学習力をつける授業の流れはこのようになります。まずは図解をご覧ください。
流れ自体はすごくシンプルです。
- 事実+なぜを問う問いを提示する
- 答えを考える(推測する)
- 何の知識があれば解けるのか
- 何からその知識を得るか
- どの知識を使うか
- どのようにまとめるか
- この過程全てを時間内で考え実行する。
これまでの授業と違うところは、先生が教えるのではなく、生徒がこれら全てを行う点にあります。
これまでの授業と戦略的学習力をつける授業の違い
これまでの授業の最先端といえば、こういった内容がよく取り上げられます。
- アクティブラーニング
- 課題発見解決学習
- 主的的な学び
一度は聞いたことある内容ではないでしょうか。ですが、これらの授業には大きな問題があります。やるべきことと、やりたいことの分離です。
図解しましたので、詳しくは下の図を参考にしてください 。
「これまでの最先端の授業」の流れ
よくある授業の流れだと思います。ですが、先ほども言った通り、この授業の流れには大きな問題点があるのです。図をご覧ください。
こちらの方が流れは複雑です。
- 何かしら、授業を貫く問いを出題
- アクティブラーニングで考える
- 答えを提示&インプット
- 答えのない問いを提示
- ICTを活用した課題発見解決学習
- 意見の共有
このように、問題点というのは、2分化です。実際の社会の課題を解決する授業をしようとすると、2時間分の授業が必要なケースが多かったり、毎回の授業で実施できなかったりといった問題点があるのです。
「これまでの最先端の授業」の問題点をまとめる
教科書のやるべき内容をおさえる授業と、その知識を活用して実社会の問題を考える授業の分離。
例)やるべき内容:「持続的開発」という単語と取り組みの例。
実社会の問題を考える内容:地球温暖化を現実的に解決へと向かわせる解決策
戦略的学習力をつける授業構造と見比べてみてください。効率よく学ぶことが求められる現代に、これまでの授業では効率が悪かったのです。
戦略的学習力の授業はこの問題に終止符を打ちます。
実際の授業の流れで、戦略的学習力をつける授業を解説
戦略的学習は、効率よく学ぶ力をつける授業です。イメージが難しいと思いますのでもっと細かく説明します。
戦略的学習力をつける授業のイメージ
社会に出て、ある問題に直面した際に、以下の3つを考えることができるようになるために、この3つを練習するのが、本授業です。
- この問題を考えるためには何の知識が必要で、
- どうしたら”自分が(他人ではなく)”効率よくその知識を身につけることができ、
- どのように知識を活用し効率よく問題を解決できるのか
この練習を通し、効率よく学ぶ思考をつけていきます。
具体的ながれを説明 ※簡易指導案も公開します。
ポイントだけ挙げてもイメージしづらいと思います。そこで今回は実際に行った授業の指導案を公開します。
ここで紹介する授業は、「戦略的学習力をつける授業流れ」の通り作っております。そちらを確認しつつ見てください。
戦略的学習力をつける授業の指導案
実際に授業を行った感想
実際にこの授業を行い、よかった点、反省点をまとめます。
- みてとれるほど、生徒のモチベーションは上昇
- 生徒同士の教え合いが活発に
- 普段以上に考えていた
進学を意識し、授業を受ける生徒には向いていると感じました。この子たちは、自分は何をわかっていなくて、どのように勉強すれば効率がいいか、自分で考えながら進めていました。
- 初回は補助が必要で時間がかかる
- 答えを求める生徒にプロセスの重要性を理解させるのが大変
反省点について、「僕は答えしか書きません」という生徒もいます。他にも「テストにはこっち(答え)が出ますよね?」とも言われました。
生徒からすると、自分達で導き出す授業は違和感だったようです。
答えを求める生徒に、戦略的学習力をつける授業を行う“意味”を伝える話
戦略的学習力をつける授業って、本当に意味あるの?
本記事の読者の中には、このように思う先生もおられるでしょう。生徒だけでなく、先生自信が「意味」を理解していないと授業はできません。わたしの実体験になりますが、この経験から「戦略的学習力をつける授業」の必要性を感じました。
生徒に話す際は、この話をこのまま使ってくださって大丈夫です。
少し長いので、ゆっくりココアでも飲みながら読んでください。
トーク内容
そもそもなぜ「答え」ではなく、「何の知識があれば」という遠回りを重要視するかというと、社会に出たら、答えがわからないからです。
でも、答えがないかというと、答え自体はあります。
重要なのは「答えがわからないこと」「答えが答えであると言い切れないこと」です。
想像がむずかしいですよね。実際に僕が経験した話から想像してみてください。
わたしが会社に入社してしばらくした時の話です。大学を出てすぐでしたが、1人で営業先を回っていました。結構値段のする広告を売っていました。
その時に、1つの取引先からこんなことを言われました。「来年、ウチを受ける人を増やしてほしい。どんな広告がいいかな?」1年目の僕はチャンスだと思いました。
さて、みなさん。答えはなんだと思いますか?
僕にはわかりませんでした。でも、何か依頼をクリアする答えはあるはずです。
実際に、世の中には時代を変える広告があります。「そうだ、京都 行こう」のような、答えがあるのです。
話を戻します。直接答えを求めるのではなく、別のアプローチをします。
答えに近づくために、何が重要だと思いますか?
わからない答えに対し、何がわかれば、その答えに近づけるのか。「その知識をどう効率的に得るか。得た知識を、どのように活用すれば、答えになるのか」を想像・考え、行動できるか。これが大切なのではないか。わたしはそう思いました。
必要な知識はたくさんあります。それを想像し行動できるか、ではないでしょうか。
それを踏まえた上で、学校の勉強が何をしているか確認してみましょう。
1467年、何があったでしょう? ー 応仁の乱
企業の独占を防ぐための法律は? ー 独占禁止法
これを繰り返し、答えを覚え、得られる力は何でしょうか。
今日は、次の3つを意識して取り組んでみてください。
- 「何の知識があれば、問題を考えることができるか」
- 「どのようにその知識を得れば効率が良いか」
- 「どのようにその知識を活用するか」
日本はなぜTPPに参加したのか。それに農業関係の人が反対したのはなぜか。
この問いを考えるために必要な知識は何でしょう?
あと、なにより!!!!
新しいことを学ぼうと思った時に、この考え方は強い。
大人になって時間のない中で、あたらしい資格を取ろう。大人になって一気にいろんなスキルを身につけよう。そんなとき、「何をどのように学べば効率的か」自分で考えられる人が有利です。
大人になったその時、答えをくれる先生はいないし、先生が言う勉強法も、あなたに合っているかわからないですからね。
自分で考えられる人が、最強なんですよ。
参考『ブルーピリオド』 佐伯先生
戦略的学習力をつける授業のメリット
戦略的学習力をつける授業のメリットは、大きいです。
- 本当に社会で必要とされる力をつけさせる授業である
- ICTに比べ、取り入れやすい
- 教育業界で先端的取り組みとの相性がいい
1つ1つ詳しく解説します。
本当に社会で必要とされる力をつけさせる授業である
データで見ても、2030年に必要とされるスキル1位です。
これからの時代、効率よく多くのスキルを習得する力が求められます。教師が一方的に教え込むのではなく、生徒自身が知識・手段の取捨選択を練習できることが重要となります。
本記事で紹介した戦略的学習力をつける授業の型は、基本的に生徒が自分たちで学ぶ形式です。「先生が教えてくれる存在となる授業」を終えましょう。
先生が教える形ではなく、生徒が主体的に学ぶ授業が実現する。
わたしの実体験からも、この練習(勉強法)は役に立つと言えます。先の「答えを求める生徒に、戦略的学習を行う意味を伝える話」を参考にしてください。
社会で求められる力を、どのように授業でつけていくのか。その答えの1つがこの授業の型ではないいでしょうか。
ICTに比べ、取り入れやすい
もちろんこの活動も、jamboardやロイロノートなどを活用すれば、より効率的に行えます。多くの人と協力し、iPadで調べ学習もできるでしょう。
しかし、この方法は ”白紙” ”教科書” ”資料集” この3つがあれば成り立ちます。ICTが苦手という先生でも取り入れやすい授業の型になっています。
ICTを導入すれば、より効果あり。ですが実際に僕も、ICTなしで授業してみました。
ICTなしでも実践できる。あればなおよし。
実際にICTなしで授業してみた
生徒は、白紙の中に色ペンやマーカーなど使いながらまとめたり、書き込んだものを隣の人に見せたりしていました。
調べ物も、教科書や、辞書を持っている子は辞書を使い、本当に必要な知識とは何か議論していました。
この授業の型は、ICTなしでも成り立ちます。得意な先生は、ICTもぜひ盛り込んでみてください。
教育業界で先端的取り組みとの相性がいい
最初に紹介した図を改めてご覧ください。
ここで紹介した戦略的学習力をつける授業の型は、教育業界で話題の学習を全て盛り込んでいます。効率よく学ぶ方法を、効率よく行う。
教育業界で話題の学習法を全て盛り込むことができる。
そろそろ学校現場にも「効率」を持ち込みましょう。
戦略的学習力をつける授業のデメリット
いいことばかりでは信用いただけないので、デメリットもご考慮ください。
- 慣れるまで時間がかかる
- 答えを求める子は、最後まで答えを求め続ける
- 学習すべき内容をおさえているか確認する必要がある
特に最後の1つは要注意です。
慣れるまで時間がかかる
最初の方は時間がかかります。
- 慣れない授業形態
- そもそも何が必要かわからない
- 生徒によって、学習方法に対する理解度の差が大きい
そのため、この戦略的学習力をつける授業を行う初回授業では、「こういう風にやるんだよ〜」を理解させましょう。
詳しくは簡易指導案をご覧ください。丁寧に丁寧に、何をしているのか理解させながら進めましょう。
答えを求める子は、最後まで答えを求め続ける
これは仕方ないといえば、仕方ありません。
日本のシステム的に、大学入学には試験が必要です。高校・中学の受験も知識が問われます。そして何より、生徒からすると、全員に定期テストが存在します。
これらは、答えのある”知識”を問います。(大学入学試験は変化しつつありますが)
となると、いくら戦略的学習力が社会に出て役に立つとはいえ、生徒からすると目の前の壁の方に危機感を抱きます。大学に行けなかったら、その先がなくなる。と考えてしまう気持ちもわかります。
この考え方の子どもたちに対し、どのようにアプローチしていくかが課題です。
学習すべき内容をおさえているか確認する必要がある
戦略的学習力をつける授業は、基本グループ独学形式です。生徒の進度はバラバラになることが想像されます。
はやい子はどんどん進みますが、サポートが必要な子も出てきます。
教え合いが活発なクラスでは、教える側の理解を深めることにつながりますが、そうでないクラスが課題です。あらかじめグループを設定しておくなどの工夫が重要になります。
先生は机間指導で、「本当に理解できているのか」を確認する問いを投げかけながら進めていく必要があるでしょう。
はやい子がどんどん進んでしまうというクラスには「けテぶれ学習法」の方が合うかもしれません。
より丁寧に進めるなら、「戦略的学習」と視野に入れてみてください。
戦略的学習が、教育現場を変える。
本記事で紹介した授業は、ありそうでなかった授業の型だと思います。
極端なことを言えば、今まで先生が教えていたことを、生徒自身に気づかせる授業がこれです。
そのため、誰でも導入しやすい型だと思います。
今までの「教えて型の授業」をしてきた先生からすると、「なぜわからない!!」とモヤモヤすることもあるでしょう。
そっと見守ってあげてください。サポートに徹してみてください。意外と生徒は1人でも、友達と協力し理解します。ちょっとだけ信頼してみてください。
生徒はできます。
先生もラクできます。
われわれが学校を変えましょう。
noteで「ちょっと変わった倫理の授業」を公開中
倫理の授業がつくれない…
よく言われます。地歴公民の教員でも一番担当したくないのが、「倫理」です。
そんなみなさんのために、そのまま使える指導案とスライドを公開しています!
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戦略的学習力をつける授業をしてみたい。
戦略的学習力をつける授業について具体的に知りたい。