【好循環】持ち込み可のテストこそ考える力を育てる。困難校こそ暗記テストを廃止にすべき、そのメソッドを紹介

ゆとりんり

テスト期間に全然勉強してくれない!
本番も空欄ばかりで、あげくのはてに難しすぎるとかいいやがって!

せっかく学期を通して教えてきたのに、よく耳にしますよね。すごく悲しくなります、わかります。

ですが、こんな現状をたった紙1枚で解決する方法があるのです。

それが「テストを持ち込み可にする」です。

筆者の紹介

本記事を書いた人

ゆとりんり:
新卒で倍率100倍の民間企業に就職後、教員に転職
教員採用試験の採用枠1枠に1発合格(働きながらの完全独学)
県に授業の研修用資料の提供や、学校の試験問題見本の作成を行う。
現在は教員から転職して、並にゆとりに働いています。
noteで「少し変わった倫理の指導案」をスライドと一緒に公開しています!

ただ「変なことを言おう!」と思って、持ち込み可のテストを紹介している訳ではありません。ちゃんとした理由と仕組みがあります。ぜひ最後まで読んでいってください。

取組事例の紹介

日本経済新聞の中で次のような記事が書かれています。

によると、欧米では日本のように定期テストがある国は少ない。フランスには一律の定期テストがなく、大学入学資格試験バカロレアが記述式のため、高校生は解答に至る考えを論理的に説明する訓練を重ねているという。

 2学期制の韓国の中学校は2016年度から3年間のうち任意の1学期間を「自由学期」とし、期間中のテストをなくす取り組みを始めた。テストがない分、体験型学習など幅広い教育の機会を取り入れられる利点がある。

 同省調査企画課の担当者は「試験のために知識を詰め込む学習は生徒の負担が大きいとされ、人間性を豊かにする教育が求められている」と話す。千代田区立麹町中学校の工藤勇一前校長は「暗記したことを解答用紙に書く知識偏重型の日本のテストのあり方は国際社会では通用しない」と指摘する。

日本経済新聞『中学の定期テスト改革 ノート持ち込み可、暗記減らす』
本記事の読者

長いよ!まとめてよ!

という声も聞こえてきそうなので、かんた〜んにまとめると次のような内容です。

記事をすご〜く簡単に要約

世界は、思考力。日本は、知識力。そんな教育が展開されている。
結果として、日本の教育は世界で通用しない。

また、本記事では、次のようなことも書かれています。

(ノートを持ち込み可にする等)テストを見直した結果、家庭学習に取り組む生徒の姿勢も変わってきた。高得点を狙うには単純に単語を書き込んだだけのノートは役に立たず、質を高める必要がある。

日本経済新聞『中学の定期テスト改革 ノート持ち込み可、暗記減らす』

持ち込み可のテストは、生徒の普段の取組姿勢を変えるということが、実証されつつあるということです。

つまり、本記事で提案している「持ち込み可のテスト」は変なことではないのです。

「持ち込み可のテスト」のメリット

この方法には多くのメリットがあります。例えばまとめて紹介します。

生徒にとってのメリット
  • 知識ではなく思考力を養うことにつながる
  • 普段の授業の取組が変わる
  • 教え合いが起こり、ラーニングピラミッド最上位の定着が可能となる
  • 自習の習慣が身に付く
先生にとってのメリット
  • 思考力を問われる共通テストのような試験を出題できる
  • ノートをとってくれない、空欄が多い、などの悩みを解決
  • 授業中の姿勢でモチベアップ

生徒のメリットについて、それぞれについて説明していきます。

知識ではなく思考力を養うことにつながる

これはまさに先ほどの記事にもあった通りの内容です。テストといえば、一夜漬けで知識を入れてくる生徒がいるのが鉄板です。特に社会系科目はそうなりがちです。

ですが、持ち込み可にすれば知識の勉強をする必要がなくなります。思考力問題への対策に時間をかけることになります。これにより、思考力が身に付くことになるのです。

ただ、教員にはその分、テストで知識を問う問題形式から、思考力を問う問題への変更が求められるでしょう。

記事で紹介された国語の出題例

物語のキャッチコピーをつけ、理由を説明せよ。

このような問題に対策をしようとすると、授業中も本質的な理解が必要になりますし、ただのノートではテストで役に立たないものになってしまいます。そこでもう1つのメリットです。

普段の授業の取組が変わる

ノートを持ち込み可とすれば、授業で生徒は先生の話を聞きのがすわけにはいきません。

知識重視のテストでは、「黒板に書いている単語」「教科書の用語」これさえおさえていれば点数が取れました。実質ノートは不要なものとなります。

ですが、本質的にいえば、ノートというものは、思考を整理するためにとるものです。持ち込み可のテストは、ノートの役割を本来のあり方に戻します。

ノートをとる目的が変わる

知識重視では、ただ写すだけだから書かない。思考重視では、思考の形跡を残すようになる。

生徒のノートの取り方は、先生の話のメモや、考えたことをメモなど、「テストの思考問題対策」に向けてものになっていきます。そうすると、生徒の授業に向かう姿勢も変わるでしょう。

また、先生もやる気のある生徒に授業するのはモチベ向上につながりますよね。当初抱いていた、ノートを書いてくれないという悩みはこれで解決できます。

教え合いが起こり、ラーニングピラミッド最上位の定着が可能となる

みなさんは、自分がうまくノートを取れているか不安になったときどうしますか?

ちょっとここ見せて?
ここに書いてあるのって、どういう意味なの?

など友達に聞きませんか?

これ、すごく効果的なんです。この資料をご覧下さい。

ラーニングピラミッド

キャリア教育ラボ

この図によると、「他の人に教える」は定着率が90%もあります。普段の講義と比べると、格段の差です。

先生からすると、テストを変え、持ち込み可にすると生徒の学習定着度の向上も期待できるのです。これはつまり、長期な視点で見ると、共通テストでの得点りつ向上にもつながります。

なぜなら…

自習の習慣が身に付く

普段の授業後に、このような「教えあい」をしていると好循環が生まれます。

期待できる好循環の例

休憩時間という短い時間で忘れまいと自分のノートにメモしたり、

放課後に友達がいる間に聞きたいことを聞き、ノートにまとめたり、

あわよくば家で、ノートの見栄えを整えるためにノートを開いたり。

このように持ち込み可のテストは、結果として「自分から学へ向かう姿勢」が身につくのです

高校1年生などの早い段階から取り組ませることで、受験期には完璧な習慣が身についていることも期待できます。

具体的な「持ち込み可のテスト」の導入方法

この取組には障壁もあります。ここではそれらも含めて、導入までの手順を紹介します。

  1. 教科内で検討
  2. 管理職に相談
  3. 生徒におろす
  4. ノートチェックを可能なら週1で実施
  5. テストで持ち込みを実践

おそらく「え…」と思われた先生もいるでしょう。導入には当たり前ではありますが、管理職の許可が必要です。

基本的に定期テストでは「不必要なものは出さない」なので、許可が必要になります。お堅い学校ではここで廃案になることも考えられます。

そのためにも

ポイントは教科内で検討になります。若手の先生方では「なんか若手がとんでもないこと言い出したぞ」となってしまいます。

そこで、ベテラン先生から説得しましょう。教科主任の先生に先の資料や、本記事で書いたメリットを提示し、やってみたい旨を伝えましょう。そして、管理職にあげてもらいましょう

妥協案の用意

導入の1歩目として、持ち込み可のペーパーというてもあります。

「ノートは何をするかわからない」という管理職もいるので、「テスト前にまとめた1枚もののみ持ち込み可」ならば大丈夫か確認しましょう。

これでも生徒は点を取るためまとめ始めます。効果はあるでしょう。この方法で実施する先生もおりました。

管理職のOKが出たら

いざ生徒に伝えましょう。その際ルールは明確にすると良いです。

  • ノートなのか、1枚ものなのか、コピーはOKなのか(基本的に不可・自筆のみ)
  • 週1で提出を課すかどうか
  • 付箋はOKか(OKで良い)

このようなルールと共に生徒に伝えましょう。

そして実践

監督者の先生には持ち込み可のノートやプリントがあることを伝えましょう。生徒のカンニングと間違われ、大騒動にならないように気をつけましょう。

特に試してもらいたい先生は「〇〇校の先生」

もちろん進学校の生徒は言わずもがな上手にノートをとって、思考力を鍛えることができるでしょう。自分達で考え、まとめる能力が高いため、教え合いも容易に成り立ちます。

ですが、困難校の先生にこそ試してもらいたいのです。わたしが勤めていた困難校では、全くテスト前に勉強をしない生徒はたくさんいました。

「テスト期間=部活のない遊び期間」という認識の子たちがわんさかいます。ですが、持ち込み可システムを挿入したところ、目の色を変えてまとめていました。

まとめる能力は高くないですが、周囲の友達と協力して、点数が高い人のまとめ方をマネしつつまとめていました。

結果、テストの点も上がり、本人たちも嬉しそうでした。

このきっかけが勉強に対するイメージを少しずつ変えていくのだと思います。

持ち込み可が、業界を変える。

本気記事を読んで「ちょっとやってみようかな」と思った先生は、まず教科内で話を出してみて下さい。無理そうなら、指導教諭等、授業に積極的な先生に話してみてください

学校現場では「根回し」が必要です。

若手1人ではどうにもできないかもしれませんが、あなたのような人が今後の教育を変えるきっかけとなることは可能です。

まずは「話題に出す」ことで初期微動を。

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倫理の授業がつくれない…

よく言われます。地歴公民の教員でも一番担当したくないのが、「倫理」です。
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